ばばちゃんが立ち上げたサマースクールとうもろこし。先日全日程が終了した。地域の小学生たちを受け入れて夏休みを一緒に過ごす団体だ。裏方にはイワミノチカラの伊藤さんがいて、運営サポートしている。会場協力には地域のいくつかのカフェや施設、スポンサーしてくれる企業もいた。(なぜばばちゃんがこういう活動をはじめようと思ったかについてはここを読んでもらえたらと思います。)

小学生の子どもを持つ親にとって子どもが40日間をどんな風に過ごすか(過ごさせるか)というのは毎年の課せられたテーマみたいなものだ。保育園に預けていた頃とはまるで違い、主体的に過ごすことを求められる。朝起きて、夜寝るまで自由に過ごせる分、いかに充実した時間を創造できるか(させてあげるか)という意味においてとうもろこしのような存在は対価を払ってでもぜひ参加したいと話を聞いた当初から思っていた。喜んで息子を預けたが、彼がとうもろこしの日々をいかに楽しめているかは汗びっしょりで笑顔で帰ってくる顔を見れば一目瞭然だ。

小学校に併設された児童クラブはもちろん夏休み期間中もオープンしているけれど、とうもろこしの存在の魅力は「こういう風な世界観でつくりたい」という信念がある人が責任運営しているということにある。よくも悪くも制限された学校教育の枠を少しだけ出て、いつもの友人や大人たちと少し異なる新しい世界と新しい場所。もちろんルールは当たり前にあるけれど、子どもたちはきっと「とうもろこしという個性的な空間」のなにかを感じ取っているに違いない。年齢も関係なく、日々仲良くなっていく様を見ると、こちらもうれしくなってくる。

そしてひと夏の体験で子どもは変わっていく。そういうことを江津の中で経験させてあげることができたことには親としてとても満足しているし、立ち上げてくれたスタッフの方には感謝の気持ちでいっぱいだ。(こういう素晴らしい活動に対して、なにかお手伝いできればということでウェブサイトを作らせてもらった。今年度やったことは実績としてきちんとアーカイブしておく必要性を感じた。)

 

子どもが成長するにつれて「どんな環境でこれから息子を育てていくのか」についてよく妻と話し合っている。考えてみればまずは自分と妻の自由を求めて東京から島根に移住してフリーランス活動をはじめたし、妻と蔵庭をつくった。けれどもそれは僕ら大人にとっては最高の移住体験だったわけだけど、息子にとっての幸せな環境づくりはそれとは別で考えていく必要がある。もちろん「親が幸せに過ごせていれば、子どもだってそれを感じて育っていく」とは思っている。けれど、もう少し選択の幅が欲しいと思うし、これだけ生き方が多様化していく世の中で旧態依然とした文科省の教育環境に絶対合わせなければいけない、ということでもないだろう。いわゆる普通の高校の、普通科に行く、普通の高校生活を送るくらいなら、もっと個性的な選択をするくらいが今の時代、ちょうどいいかもしれない。

今高校のオンラインスクールがじわじわと増えているように思う。N高やS高、ゼロ高やルネ高なんてものもある。他にも広島にはイエナプラン教育をコンセプトにした新しい学校ができた。はじまったばかりだし、まさにチャレンジだろうけれど福山市教育委員会は先進的だと思わずにいられない。子育て・教育環境のプライオリティの高い親にとってはイエナプランのコンセプトに賛同できれば迷わず移住するだろう。(そこには『福山だから移住する』という理由は存在しない。)

これまでの日本の義務教育や学校教育に対して変化を求める親はオンラインスクールもきっと選択肢に入ってくると思うし、今後増えてくるはずだ。おもしろいのは教員免許を持っているわけではない、ただ日本の学校教育に問題意識を持っている人たちが立ち上げていくところ。彼らにとって日本の学校教育はイノベーションの余地がたくさんあるのだろう。

島根が本当に移住促進を促すなら次の時代に期待できる教育コンセプトを掲げる学校を新設する、というのはどうだろうか。移住者を増やすには一番早いアイデアだと思う。教育魅力化という成功モデルとはまた違うレイヤーで、「こういう教育環境を求めている親御さんはきっと多いだろう」というものが具現化できれば島根だろうが無名な町だろうが、かなり価値を高めることができるはずだ。鳥取の「まるたんぼう」が成功モデルとしていい例である。

おしゃれなカフェや、リノベーションされたゲストハウス、かっこいいシェアオフィスで移住者を呼ぶことはもはや難しい。なぜならどこにの町にもあるからだ。それらはたしかにこれまでの地方創生「鉄板コンテンツ」だったが、次に来るのは「子育て環境に個性を見出した無名な町」と「オンラインスクール」「新しい価値をもった学校」だろう。

というのが小さな町の、まだ無名なサマースクールのひと夏を見て感じた率直な感想だ。子どもも親も本当に満たされた夏だった。とうもろこしに心から感謝を。

 

Photo credit : Koichiro Toda