数年前に一度撮らせていただいた窪田さん。Craftsman’s Base Shimaneという島根PRのプロジェクトで再び撮らせてもらう機会があった。吉原木工所の吉原さんと教育魅力化で有名な隠岐・島前高校の大野さんと奥さんのご家族、そして今回の神楽を舞う窪田さんという、3部作のラストを飾る一本で、撮影は1ヶ月に渡り、何シーンかに分けて撮らせてもらった。

彼女は本当に気さくで飾らない、正直で、まったくウソっぽさがない、虚栄心や自己顕示欲みたいなものがない、ストレートな感じがする。聞けば大学生の頃にはじめて島根に来て以来、この町が好きになり卒業後に移住したという。この町に来てもう10年くらい経っている。いわゆる移住バブルみたいにメディアにもてはやされた時期よりも早かった。

石見神楽は大衆的な伝統芸能で、この土地に完璧に根付いている表現活動であり、大衆にとっては娯楽だ。ソウルフードならぬ、ソウルエンタ。雨の日も風の日も何十年も公演し続けている。やり続けているということを想像しただけですごいことだと撮影していて改めて思う。移住して、地域に入って、舞子連中に属し、ここで暮らして10年。

それでも都会でなんとなく生きていても10年という時間は誰でも全く一緒だ。30代なんてあっと言う間に過ぎ去ってしまうことを振り返る立場で言えば、何をして生きていくかが決められた時点で、幸せをつかむまでの距離はかなり近いものになってくるということかもしれない。

 

プロジェクトチームにいるライターが書いたもの。こちらもぜひ読んでもらいたい。

日々の暮らしの中に、神楽がある──伝統芸能「石見神楽」を受け継ぐ

 

このコロナ禍の中でリスク的とも言えるほど今島根県は都心部に向けてのプロモーションにかけている。今このタイミングしかないんだとばかりに。

このCraftsman’s Base Shimaneというプロジェクトは島根県の依頼案件のもと、フリーランスが集まって夏頃から活動し、映像制作(リリース先は県のYouTube)とnoteにコンテンツを展開している。映像は入り口とか関心、つかみぐらいで興味を持った人はnoteを読んでさらに深く知ってもらい、もしかしたらその先に活動を起こす人がいるかもしれないし、そういうところに向けて放っている、というのが本質であり、我々のミッション。

フリーランスになって島根で暮らし、働いているということをテーマにしたトークイベントの依頼が月イチくらいである。蓋を開けてみれば「島根で暮らしている意味」とか「島根の魅力」みたいな話はもう僕はほとんどしていなくて、結論は「好きに生きているだけ」というシンプルな話に落ち着く。

「島根のために仕事をする」だなんて思ったこともないし、それでいいと思っている。なんというか、自分がどこどこに住んでいるという意識すらなくなってきたということだ。これは僕の場合だろうし、どこでも結局同じワークスタイルだから、ということに尽きる。

でも「好きに生きていく」というモードを持てると強いと思う。どこに住んでいても、どんな仕事をするのも自由だけど、今の時代「あなただけのスキルを持っているか否か」が大きく意味を持つことは間違いない。そしてちょっとしたスキルを学ぶことがいとも簡単になっているのが本当にすごい。とんでもない時代をぼくらは生きている。

ということでこの映像、解釈や感じ方はそれぞれだろうけど、なにかあなたにとって次のアクションにつながるきっかけになってくれたらとても嬉しい。