仕事含めてまわりを見渡してみるとコロナ禍で起きたことのひとつにオンラインコンテンツ強化ということがある。国内でも事業者向けの経済的サポートがたくさんあるのでこの機会を利用してウェブサイトを充実させようというニーズが高まっている。今ウェブデザイナー業は大忙しじゃないだろうか。

幸い僕のところにも新規のご依頼が来るが、とりわけECサイトをどうにかしたいとかコロナ禍を経て、新しいメッセージやマーケット開拓をしたいという案件が多い。ECに関して言うと配送オペレーションなどで手間がかかったとしても第2波がいつ来るやも知れず、-いや今年の秋冬にもう一度やって来る前提で-そのときリアル店舗がどうなるかわからないから早めに立ち上げたいという思いなわけだ。飲食業や観光業などは顕著である。

僕が今関わる案件のほとんどで思った印象として「ターゲットをしぼる」という考え方が定着してきたうように思う。(「選択と集中」は僕の好きな言葉だ。)少し前はネットを使って、いやネットだから360度の人たちに届けたいと思う人が多くいたけど、ようやく今は自分のサービスがどんな場所に届けばよいのか、届けたいと思っているのかを意識できる人が増えた感じがする。360度と聞くともれなく無駄がないように感じるが、実はまったく誰にも刺さらないものになりうることを広告を出す側もわかってきたということだ。

 

ある日、都心部の出版社から書籍の写真撮影を頼みたいと問い合わせがあった。僕がこういう問い合わせでまずもって気にするのは「なぜ戸田耕一郎に頼みたいと思ったのか」が記載されているかだ。ギャラ交渉よりその前に。これが記載されていなかったらほぼお断りする方向に持っていく。誰でもできる仕事をランダムに送っている可能性は高いし、下手するとテンプレを用意して誰に送っているのか担当者はわかっていないんじゃないかとすら感じる。こういう仕事を引き受けるとトラブルが起きやすい確率が高くなる。(フリーランスはこういうところに敏感で直感的なのですよ。)

ぶっちゃけ「カメラマンが他にいないから(知らないから)」という理由でもいいと思う。なんでもいいからあなたに頼みたい理由を伝えたほうがいい。僕が誰かに頼みたいときは「なぜあなたにお願いしたのか」を伝えないことなどまずない。

同じような例でウェブ制作の依頼が来たこともあった。フリーランス依頼のプラットフォームがこれだけあるのにわざわざ個人のサイトに送ってくるなんてご丁寧に、、と思う一方で自動で検索してオファーを送れるシステムがあってもおかしくない。安く食いつく制作者を探しているのもしれない。こういう仕事は危険すぎてまず僕は受けない。

こういうのを営業・マーケティングを名乗る人たちが行うのだからなんとも言えない気分になるのだが、ウェブを作ったり、映像制作を頼んだり、広告を発注する側も「どういう会社か」「どういう人が安心できるか」を見極める視点を持つ必要はある。これからリモートワークが主流になるのは間違いなく、相手に伝えるメッセージにも今まで以上に気を配りたい。

自分はどこに向けて仕事をしているのか。自分はどんな人から仕事を受ける設定・イメージでいるのか。これを意識するだけで全く結果が変わってくる。

 

さて、ようやく新作のTRAVELLINGをリリースする目処がたちました。ニュージーランド編。創刊号(欧州編)をSTORESで買えるようにしています。有料かよ!と思わないでくださいね。もちろん今回も無料配布です。A3の定形外郵便で全国一律で郵送するのでそのために金額設定させてもらいました。島根にいない人はもちろん、蔵庭方面にも来ることができない人のための郵送システムです。月末には購入できるようにしますのでぜひ。本誌については改めて。

とは言うもののこれから自主制作企画を充実させていきたいと思っている。少しづつでいいから世界中の移動が再開ムードになって、多少の安心感が戻ってきますように。